【書籍】発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい

書籍「発達障害当事者研究」の紹介ページです。感覚過敏の困りごとを当事者目線で綴られています。

書籍の紹介(Amazonより)

あふれる刺激、ほどける私!! なぜプールサイドを歩けないのか、なぜ空腹がわからないのか、なぜ看板が話しかけてくるのか、なぜ月夜の晩は身体がざわめくのか……。 発達障害といわれている人たちが体感している世界を、当事者自身のことばでゆっくりていねいに書き表しました。 世界を縮減せずに受け取ることの豊かさを表現するともに、過剰の苦しみは心ではなく身体に来ることも伝えてくれます。 「感覚過敏」「こだわりが強い」などの通説は、間違っていないけれど、そのようにしか表現できないことの貧しさもまた教えてくれる画期的研究です。

内容(「BOOK」データベースより)

「過剰」の苦しみは心ではなく身体に来る!外部からは「感覚過敏」「こだわりが強い」としか見えない世界の豊かさを、アスペルガー症候群当事者が、脳性まひの共著者とフリーズしながら探る画期的研究。

抜粋

■2章……外界の声を聞く世界との接触

 小学校五~六年生ごろのある晴れた日曜日、東京は池袋のサンシャイン通りに差しかかる交差点で突然、私は無数の看板たちに「襲われた」。

 車両二台がぎりぎりすれ違えるくらいの車道も、その両脇にある歩道も、満員電車のように人でいっぱいである。通りの両脇にそびえ立ち並ぶビルからは、大量の看板が通りに向かって突き出していて、赤青黄白とカラフルにひしめき合っている。

 それらがいきなり、みるみる大きくなって、次々に私に覆いかぶさるように迫ってきたのである。しかも、おなかに書いてある「英会話」「ハンバーガー○○」「お好焼・たこ焼」「***マート」「○△□旅行代理店」「ゲーセン」「献血ルーム」「現在上映中」「××珈琲」「□□銀行」という文字を読み上げながら。

 私は手で耳をふさぎ、目を閉じた。目も耳もうるさかった。足元はぐらつき、平衡感覚を失う。その状態で歩きつづけたのか、立ち止まったのか、しゃがみこんだのかは記憶にない。

 なんだろう、この感覚は。勉強のしすぎで疲れているのかな。テレビドラマでこんな映像を見たことがあるから、疲れるとだれでもなるのかな。それとも私はこのまま、人に「空想だ」と一蹴される世界から出ることなく、人とはつながれない世界に本格的に参入していくのかな。

 これまでも、うすうす「変だな」と思ってはいたが、いったい私は何者なのだろう……。そこには、外界からの感覚に圧倒され脅かされている自分と、自身を冷静に俯瞰でとらえている自分がいた。
 その後、この「看板が襲う現象」は当たり前のこととなり、私は看板とはなるべく「目を合わさないように」繁華街を歩くことで、身を守るようになった。目線を正面から足元までに狭め、上方および左右の視野を遮断することで大量の情報をインプットせずに済むからである……。

 1章では、体の内部で生じる身体感覚と心理感覚がバラバラで細かなレベルで、いずれも潜在化されずに等価かつ大量に感受されるので、それらを絞り込み、ひとつの身体の自己紹介や具体的行動にまとめあげるのがゆっくりであることを説明した。
 この2章では、体の外部で生じる刺激も潜在化されず、等価かつ大量に感受しているという状況を語る。そして、「それらが何であるか」を把握するモノの自己紹介や、その刺激に対してどう行動を選択すればよいのかをまとめあげるのも、同じようにゆっくりであることを述べていく。

著者について

著者の綾屋(あやや)紗月さんは2児の母。2年前にアスペルガー症候群の診断を受け、これまでの苦しさの理由の一端を知るとともに、当事者研究によって幼いころからの自分自身への疑問を解き明かそうと決意する。

共著者の熊谷晋一郎さんは、脳性まひ当事者。東京大学卒業後、医用生体工学の研究を続けるとともに、小児科医としても勤務。綾屋さんとは医師としてではなく、障害当事者同士として共同研究を進めている。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

綾屋/紗月
1974年生まれ。大学時代は哲学を専攻。在学中、関東聴覚障害学生懇談会にて聴覚障害(ろう)学生とともに活動しながら、音声で話すことに高いハードルを感じる自分の言葉として手話を習得する。卒業後は、家庭教師、塾講師、ベビーシッター、保育園勤務などを数年間つとめる。2006年、アスペルガー症候群の存在を知り、診断名をもらう。現在、小3の女の子、小1の男の子をもつ2児の母

熊谷/晋一郎
1977年生まれ。新生児仮死の後遺症で、脳性マヒに。以後、車いす生活となる。小中高と普通学校で統合教育を経験。大学在学中は地域での一人暮らしを経験。また全国障害学生支援センターのスタッフとして、他の障害をもった学生たちとともに、高等教育支援活動をする。東京大学医学部卒業後、千葉西病院小児科、埼玉医科大学小児心臓科での勤務を経て、現在、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学。他の障害をもつ仲間との当事者研究をもくろんでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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